2020.09.14
ピアノのテクニックは習い始めから
先日、ベートーヴェンの「エリーゼのために」のレッスンを始めた、小学校高学年の生徒さんに
「おうちで、好きなベートーヴェンの曲を何でもよいから聴いて来てね!」
という宿題を出したところ、YouTubeで、辻井伸行さん演奏のピアノソナタ「月光」を選んで聴いたそうです。
感想も、書いてきてくれました。
今年は、ベートーヴェン生誕250周年の記念の年!
コロナ禍で中断されていたコンサートなども、少しずつ再開されて、
この秋はベートーヴェンの曲もコンサートホールで演奏され、
聴くことが出来る機会も増えてきました。
ベートーヴェンのピアノ曲といえば、
3大ソナタと言われる「悲愴」「月光」「熱情」のなかでも、「月光」は人気曲ですね。
「月光」という曲名は、ベートーヴェン自身が命名したのではなく、
本来は、「幻想曲風ソナタ」として世に送り出したそうです。
何故、月光といわれるようになったのかは、
詩人レルシュタープが、この曲の静寂な第1楽章のイメージから、
「スイスのルツェルン湖の月光の波に揺らぐ小舟のよう」と例えたことが、
きっかけになったそうです。
最近では、フィギュアスケートの宇野昌磨選手が、
試合で使用していた曲でもあり、よく耳にする曲ですが、
ピアノ演奏としては、この3楽章は、テクニックの地道な勉強なしでは、
到底、完璧に弾きこなすことは、難しい曲です。
前置きが長くなりましたが、
テクニックの練習は、年齢が大きくなってから始めればよい、ということは決してありません。
習い始めからの、小さな積み重ねから、身についていくものです。
テクニック練習と聞けば、無味乾燥な指の訓練というイメージがありますが、
そのようなことばかりではなく、正しく練習していれば、習い始めから、自然に身につくことが出来ます。
導入期の幼児でも、楽しく弾く事と同時に、腕や、指など、
体の使い方は、無理なく何度も何度も、繰り返しレッスンしていきます。
家に帰ってからの、練習でも、それを忘れずに行えることが、理想ですが、
やはり、小さいお子さんは、忘れてしまいますから、お手本を見せながら、覚えてもらいます。
実際には、手指や、腕を持って支えてあげながら、レッスンすることが効果的なのですが、
今は感染防止で、それが、出来にくい状況ですので、
消毒したスーパーボールや、ミニクッションなどの、グッズを使って、
鍵盤へのタッチや、腕の使い方も、わかりやすく身に着けられるように、レッスンしています。
テクニックを身に付けるということは、速く指が動いたり、
ミスなく機械のように弾くということではありません。
お子さんの短い曲を演奏するときにも、表現豊かに、音楽的に、演奏するために必要な技術です。
例えば、「月光」の、1楽章のずっと続いていく柔らかな響きを出す腕の動きや、
メロデイーを浮き立たせる指のテクニックは、
幼児の使用する「バーナム」や「バスティン」という易しいテクニック本からも、
徐々に将来に向けて、身に着けていくことが出来ます。
3楽章の速い指の動きに必要なテクニックは、
低学年から使う「ハノン」や、「ツェルニー100番」や「ブルうミュラー」「ツエルニー30番」~という教材程度から、徐々に進んでいき、その先に、やがては身に付いていくものです。
これらの教本だけでなく、生徒さんに合った他の教本を、使っていく事もあります。
この頃を、丁寧に練習することが、
後々にテクニックを付けるための基礎で、初めの一歩ですね。
コツコツと積み重ねていけば、「月光」で言えば、
小学校高学年や、中学生でも、弾きこなすことは、可能になります。
又、実際に最近では小、中学校の合唱コンクールの伴奏も、
難しいテクニックが要求される曲も、多くなっています。
ちょっと伴奏が出来ればよいと、思っていると、これは大変なことで、
やはり、地道にテクニック練習を続けていくことで、要求された表現も出来るようになり、
伴奏者にも選出されやすくなり、自信を持つようになった生徒さんもいます。
ピアノで、自分の思う表現が出来たら、本当に楽しいですね。
クラシック作品だけでなく、好きな、ポップス、ディズニーの素敵なアレンジの曲も、
表現豊かに、弾きこなすことが出来るためには、やはり、
基礎固めのテクニック練習があるからこそでしょう。
ピアノを正しく、楽しく弾きこなすことが出来る、そんな、生徒さんへと導いていくために、
これからも、ますます新しく研鑽を、積んでいきたいと思います。